母は移住"失敗"女子だった

伊佐知美さんが書いた本『移住女子』を読んだ。手にした翌週には読み終えていたけど、感情を整理するのに少し時間がかかってしまった。

本では、実際に都会から地方へ移り住んだ8人の女性の素顔が描かれている。帯にあるように、どの人も「もっとわたしらしく生きていける場所がある!」と自分の人生を選んでいて、みんなキラキラして見えた。

わたしも、もうすぐ30歳。おそらく出産や子育てをしていく……そう遠くない未来を想像する機会も増えていた。東京で子育てをするイメージが全然できないからと、わたしの実家がある新潟に帰る選択肢もあるんじゃないかなあ、と話している。そんなときに知った「自ら都会から出て行く選択をした女性の考え方」は参考になるポイントがたくさんあった。

この本に出てくる8人の女性は、みんな移住してハッピーになっている。一方であまりハッピーと言えない移住もあると、わたしは知っていた。

母だ。

わたしの母は、わたしを妊娠した29歳のときに当時住んでいた東京から父の実家のある新潟県に移住した。母の実家は新潟県外だったけど、里帰り出産をすることもなくわたしを、4年後に弟を新潟で出産した。おそらく母は実家に、10年に1回ペースくらいでしか帰っていない。詳しい理由についてはここで書かないけど。

何かにつけて、母は「将来は自分の好きな場所に住むんだよ」と子どものわたしに言っていたし、最近になってから「こんな町に来たくなんかなかった」と聞かされた。わたしが子どもの頃には言わなかったけど、母は東京に未練があるまま、納得しないまま、選択できないまま、あの町でひとり生きてきたんだろう。時代のせいもあるかもしれない。でもわたしはそれに気づいたとき、絶望にも似たやるせなさを感じた。

自分が納得できない生き方をすると、つらいんだ。そうしてしまった自分を肯定する材料を後からいくつそろえても、どこか後悔がにじんでしまう。たとえそれが、自分の子どもに出会えたことだとしても。

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本はこう締められている。

本書を読んでくださった方が、より幸せで納得感のある人生を歩めますように。

"納得感のある人生"。
「移住女子」のタイトルなら「移住ってハッピーだよ」の結論でもいいのに、そうじゃなかった。自分が納得する人生を選ぶ主体性が大事だと、本が伝えていた。この本は"移住"の本ではなく、"生き方"の本。登場するのは、移住という共通項を軸に、自分の納得する生き方をしている女性たち。だからキラキラして見える。わたしもそんな人になりたい。

ところで母の話をちょっと重めに書いてみたけど、当の本人は基本あっけらかんと見せています。「世の中どこにでも悪い人はいるけど、いい人もいるよ」と言ったり、田舎でそれこそおおかみこどものお母さんのように畑を楽しんでいたり、そこそこまあ楽しく生きてるんだと思います。ただ、母本人が「親は反面教師」と言い切るので「わたしは自分で選択して生きよう」と娘は思うのです。

とはいえ、本を読み終えたわたしは、何を選択すれば納得するんだろう。それを知るためにも、もう少しわたしは東京で生きてみようと思います。

 

移住女子

移住女子